きぬさや自由帳

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心のケア 苦手な日本

「こころのケア 苦手な日本」という記事に引き付けられました

8月10日付朝日新聞精神科医の桑山紀彦(くわやまのりひこ)さんのインタビュー記事です。

よくトラウマという言葉を聞きますし、「○○にトラウマがあって」などと結構軽く使うこともあります。けれども、トラウマがもとで犯罪が起きたり、心を病んだりということもよく聞く話です。トラウマって心の傷の深いものでしょうか。

*我が家の収穫から


桑山さんは「トラウマは『資源』だと考えています。トラウマはバネになる。人生を変える起点にできる、ということです。そのために大切なのは、つらい記憶をなかったことにしないことです」と述べています。パレスチナなどで活動して、トラウマに『向き合う』ことで人は成長することもできることを実感したそうです。ただ、日本では心のケアが難しいとも感じたそうです。


それは、「日本では、トラウマは触れてはいけないものと思われがちで、心に傷を負った経験が『恥ずかしい事』だととらえられがちだというのです。日本社会では、『心に傷がないほうが良いことだ』という意識と、「みんながそうあるべきだ」という意識がセットになっている。トラウマは本来的にマイノリティーの体験ですが、どんな人でも抱える可能性があります。にもかかわらず、日本では『マジョリティーでなければまともじゃない、恥ずかしい』という意識が強く働いているように思います」と書かれていました。


日本以外を知らない私ですが、その通りではないかと思います。日本人はいつも『マジョリティー』でいたいと思っている人が大多数です。はみ出すことを恐れてみんなと同じがいいと思っています。自分を殺してでも同調しようとすることも多くありませんか?

傷ついた人が、自分を責めてしまう。他人の傷も「その人の問題だから」で片付けてしまう。それは、傷を受けた人にとって本当に生きにくい社会です。人は大小にかかわらず傷のない人なんていないでしょうから、つまりみんなが住みにくい社会になっているのだと思います。


桑田さんはトラウマを癒すために心理社会支援(PSS)というプログラムを実践しているそうです。それは、以下の三つのステップを踏んでいくものです。

  • 物理的にも精神的にも安全な環境を確保する
  • つらい記憶やそれにまつわる感情を、絵を描くことや粘土細工、映画製作などの創作活動を通して表現していく
  • 一緒に取り組む仲間や作品を見てくれた人から感想や質問をもらったり、会話をしたりして、最終的に『自分らしいトラウマ物語』を作り上げる

自分の経験や感情を表現し、それが他者に承認され、社会ともう一度つながれたという感触を得ることが、傷ついた心の回復につながるのだそうです。


記事の最後に述べられていた、「苦しみや悲しみも『自分らしさ』の一部であり、それを通してでも人はつながれると知ることが大切です。『傷のなめ合い』と揶揄されがちですが、心を支えるには、それこそが必要なのです」ということを心に留めておこうと思いました。


心のケアには他の人の手が必要で、しんどい事も認めてもらう(あなたは悪くないと言ってもらう)ことで、苦しかったことも『自分らしさ』であると認められるようになるのでしょう。多くの人がそれを理解することで、少しは生きやすい社会になるのではないかと思いました。